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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
そうだ、カンノ博士。
博士とは、しばらくいっしょにならないが、カンノ博士こそは、正吉少年を冷凍球から無事にこの世へ出してくれた恩人の一人で、有名な生理学の権威である。
「ほんとに行きたいのかね、正吉君」
カンノ博士は、人のよさそうな笑顔で、正吉を見まもった。
「ぜひ行きたいのです。三十年のながい間、ぼくは眠っていて、知識がうんとおくれているのです。ですからこんどは、今の世の中で、一番新しいものを見て一足とびに学者になりたいのです」
正吉は、子供らしい欲望をぶちまけた。
「ほんとに学者になるつもりなら、一足とびではだめだよ。こつこつと辛抱づよくやらなければね。宇宙旅行だってそうだ。見かけは花々しく見えるが、ほんとうに宇宙旅行をやってみれば、はじめから終りまで辛抱競争みたいなものだ。ちっともおもしろくはないよ」
カンノ博士のことばは、じつに本当のことであったけれど、正吉には、博士が正吉の宇宙旅行を思いとどまらせようと思って、つらいことばかり並べているのだと思った。
「ぼくは辛抱するのが大好きなんです。三十年も冷凍球の中に辛抱していたくらいですからね」
「ああ、そうか、そうか、それほどにいうのなら、連れていってやるかな」