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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

心配はいらないです」

「おやおや、君はどこでそんな知識を自分のものにしたのかね。たぶん知らないと思っていったのだが……」

カンノ博士は小首をかしげる。

「先生は忘れっぽいですね。この間、大学の大講堂で講演なさったじゃないですか。――今日外科は大進歩をとげ、人体を縫合せ、神経をつなぎ、そのあとで高圧電気を、ごく短い時間、パチパチッと人体にかけることによって、百人中九十五人まで生き返らせることが出来る。この生返り率は、これからの研究によって、さらによくなるであろう、そこで自分として、ぜひやってみたい研究は、地球の極地に近い地方において土葬または氷に閉されて葬られている死体を掘りだし、これら死人の身体を適当に縫合わして、電撃生返り手術を施してみることである。すると、おそらく相当の数の生返り人が出来るであろう。中には紀元前何万年の人間もいるであろうから、彼らにいろいろ質問することによって、大昔のことがいろいろと分るであろう。そんなことを、先生は講演せられたでしょう」

「ハハン。君はあれをきいていたのか」

「きいていましたとも、だから、もう今の世の中では、死んでも死にっ放しということは、ほとんどないことで、死ぬぞ、死んだらたいへんだ、なんて心配しないでよいのだと、先生の講演でぼくは分ってしまったんです。