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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
そしてその鉄板は、横へ長いものが重なり合っていると見え、甲虫のからだのようであった。
その頭部は、しいの実のように、大部分は円筒形であるが、上は、しいの実のようにとがっていた。そしてまん中あたりに、目の穴ではないかと思われるものが二つあった。
それが目だとすると、狐の目のようにつりあがっているといわなくてはならない。
そういう異様ないでたちの一団が、みんなでかれこれ四、五十名も、峰々から下をうかがっているのであった。太陽の光が、彼らの頭やからだの側面を、くっきりと照らし出していた。
とつぜんあたりが暗くなった。
太陽が没したのである。そして夜が来たのだ。
月世界においては、空気がないために、地球上の日暮のように、じわじわ暗くなるようなことはなく、いきなり暗くなる。たそがれのうす明りなどというものはなく、いきなり闇がおとずれるのだ。
日の暮れるのを、異様な一団は待っていたようである。暮れると同時に、異人の中から一人が立ち上った。と、彼のからだがほたるいかのように光った。全身に、光の点々があちらこちらにあらわれ、それが明滅する。
と、そのそばにいた他の異人が、またすっと立ち上って、全身をほたるいかのように光らせる。