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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

三四郎在火车上遇见一位肤色黝黑的女子,不由自主想起故乡的恋人。他假装睡着偷听她和邻座老人聊天,越听越放不下。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 页

青空文庫

かきかけた水彩がある。

「絵をお習いですか」

「ええ、好きだからかきます」

「先生はだれですか」

「先生に習うほどじょうずじゃないの」

「ちょっと拝見」

「これ? これまだできていないの」とかきかけを三四郎の方へ出す。なるほど自分のうちの庭がかきかけてある。空と、前の家の柿の木と、はいり口の萩だけができている。なかにも柿の木ははなはだ赤くできている。

「なかなかうまい」と三四郎が絵をながめながら言う。

「これが?」とよし子は少し驚いた。本当に驚いたのである。三四郎のようなわざとらしい調子は少しもなかった。

三四郎はいまさら自分の言葉を冗談にすることもできず、またまじめにすることもできなくなった。どっちにしても、よし子から軽蔑されそうである。三四郎は絵をながめながら、腹の中で赤面した。

椽側から座敷を見回すと、しんと静かである。茶の間はむろん、台所にも人はいないようである。

「おっかさんはもうお国へお帰りになったんですか」

「まだ帰りません。近いうちに立つはずですけれど」

「今、いらっしゃるんですか」

「今ちょっと買物に出ました」

「あなたが里見さんの所へお移りになるというのは本当ですか」