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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

三四郎在火车上遇见一位肤色黝黑的女子,不由自主想起故乡的恋人。他假装睡着偷听她和邻座老人聊天,越听越放不下。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 页

青空文庫

「いつから取りかかったんです」

「本当に取りかかったのは、ついこのあいだですけれども、そのまえから少しずつ描いていただいていたんです」

「そのまえって、いつごろからですか」

「あの服装でわかるでしょう」

三四郎は突然として、はじめて池の周囲で美禰子に会った暑い昔を思い出した。

「そら、あなた、椎の木の下にしゃがんでいらしったじゃありませんか」

「あなたは団扇をかざして、高い所に立っていた」

「あの絵のとおりでしょう」

「ええ。あのとおりです」

二人は顔を見合わした。もう少しで白山の坂の上へ出る。

向こうから車がかけて来た。黒い帽子をかぶって、金縁の眼鏡を掛けて、遠くから見ても色光沢のいい男が乗っている。この車が三四郎の目にはいった時から、車の上の若い紳士は美禰子の方を見つめているらしく思われた。二、三間先へ来ると、車を急にとめた。前掛けを器用にはねのけて、蹴込みから飛び降りたところを見ると、背のすらりと高い細面のりっぱな人であった。髪をきれいにすっている。それでいて、まったく男らしい。

「今まで待っていたけれども、あんまりおそいから迎えに来た」と美禰子のまん前に立った。