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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
――もう、どんな事も何んでもなかった!
知らないうちに、右手で拳がぎっしり握りしめられていた。
十五
事態が変ってきた
事態が変ってきた。
秘密に持たれていた「地主協議会」のうちから、今では殆んど社会全体と云っていい反感が地主に対して起きている時、これをこのまま何処までも押し通して行ったら、「大変なことになる」ということを考える地主がだんだん出て来た。――それ等の人達が岸野に「妥協」をすすめた。
岸野の「工場」にストライキが起りそうになっていた。――七之助がそのために必死に働いていた。組合員がモグリ込んでいた。千名から居る職工が怠業に入りかけたということが、岸野を充分に打ちのめしてしまった。
争議団では更にこの争議を「社会的」なものにするために、学校に行っている小作人の子供を一人残らず盟休させて、小樽へ来させる策をたてた。それが新聞に出た。――体面を重んじるH町と小樽の教育会が動き出した。岸野に「かかる不祥事を未然にふせがれるように」懇願した。
労働組合に所属しているもののいる工場や沖、陸の仲仕などが「同情罷業」をしそうな様子がありありと見えてきた。