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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

俺達はただ機械のそばについていて、手だけ動かしていればそれでいい。ところが、その眼で農村を見れば、まるで居眠りでもしたくなる程のんびりと昔風でないか!――追い付けるものでない。

都会にいる地主でも、そんなワケで、地主だけではとても眼まぐるしいこの社会に、太刀打ちが出来て行かない。地主でも。で、百姓からは出来るだけ沢山の小作料を搾ればいいという風に、放ッたらかして置いて、ドンドン別な仕事をやっている。――丁度、岸野のようにだ。だから、例えて云えば「人魚」のようなものだろう。

上半分だけは「地主」だが、下の半分は「資本家」になっている。ところが、下の部分の資本家の方が、ドンドン上の地主の部分を侵して行く傾向だそうだ。――だから、今時の地主は地主自身、小作人が可哀相だとか、もう少しこの社会に当てはまるように改良してやりたいとか、そんな事に少しでもかまっていられない。逆に自分の方がおかしくなる。小作からは取れるだけ取ったら得、皆そう思っている。

もう小作人は地主様を当てにして、何んとかして下さるだろう、と待っていたら、百年経ったって待ちぼうけを食うのが落ちだ。