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ふしぎなるくうかんだんそう
不思議なる空間断層
海野 十三
「ぷろふいる」1935(昭和10)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,651 字 · 30 页
室の中央に赤い絨毯が敷いてあるし、その上には瀟洒な水色の卓子と椅子とのセットが載って居り、そのまた卓子の上には、緑色の花活が一つ、そして挿してある花まで同じ淡紅色のカーネーションだった。
「ふ、ふ、ふ。ふっ。」
乃公はおかしくなって笑い出したくなるのを、じっと怺えながら室の中央に進んだ。そこで奥の方を見ると、果して例の大鏡があったのではないか。乃公はすっかり安心して、たいへんに楽な気持になった。
(役者などいう職業も、毎日同じ道具立で、同じことを演るのだから、乃公がいま感じていると同じことに、初日以後は、やるたびに楽になってくるんだろう)
そんなことを思ったりした。
――乃公は例によって、いつの間にか大鏡の前に立っていた。そこに映る自分の姿をみると、例のとおり怒髪天をつき、髭は鼻の下をがっちりと固めているという勇ましい有様だった。
「どうぞお飲みものを……」
と、男の声がうしろでして、振りかえってみるとちゃんと例の立派な顔の若い男が立っていた。その傍には、下を俯むいている連れの若い女さえも、前回とは寸分たがわぬ登場人物だった。
――それから乃公は、順序に随って、卓子のとこへ帰って来た。