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ふしのくすり
不死の薬
小川 未明
「日本少年 臨」1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,534 字 · 7 页
取り、つつがなく帰ってくるようにと、くれぐれもいわれました。
その老臣は、謹んで天子さまの命を奉じて、御前をさがり、妻子・親族・友人らに別れを告げて、船に乗って、東を指して旅立ちいたしましたのであります。その時分には、まだ汽船などというものがなかったので、風のまにまに波の上を漂って、夜も昼も東を指してきたのでありました。
老臣は船の上で、夜になれば空の星影を仰いで船のゆくえを知り、また朝になれば太陽の上るのを見てわずかに東西南北をわきまえたのであります。そのほかはなにひとつ目に止まるものもなく、どこを見ても、ただ茫々とした青海原でありました。あるときは風のために思わぬ方向へ船が吹き流され、あるときは波に揺られて危うく命を助かり、幾月も幾月も海の上に漂っていましたが、ついにある日のこと、はるかの波間に島が見えたので大いに喜び、心を励ましました。
その家来は島に上がりますと、思ったよりも広い国でありました。そこでその国の人に向かって金峰仙という山はどこにあるかといって尋ねましたけれど、だれひとりとして知っているものがなかったのです。
その時分は大昔のことで、まだこの辺りにはあまり住んでいるものもなく、路も開けていなかったのでありました。