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せかいのかふ

世界の寡婦

宮本 百合子

「婦人公論」1946(昭和21)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,525 字 · 17 页

青空文庫

『太平』という雑誌の十月号は「欧洲の女性は前進する」という題で、ドロシー・D・クルックルという婦人がこの事情を説明して書いている記事をのせている。

このたびの戦争によって世界には未亡人が満ちあふれた。ナチス・ドイツは、女性の歎きと訴え、人民全般の悲傷の思いをふみにじって、戦争中、婦人が喪服をつけることを禁止した。ドイツの人々が、日に日に増大する黒衣の女性をみて、ナチス政権がしかけた戦争が、そのようにドイツ民族を殺しつつあることを知るのをおそれたのであった。日本でも、戦争中戦傷者の発表が奇妙な形で行われた。だんだん小きざみに、部分的に、私たちには総数が一目でのみこめない形で発表された。ナチス・ドイツでは婦人に黒衣を着せなかった。日本ではそういう禁止は出さなかったが、果して生きているやら、死んだものやらはっきりしなくて、実に多くの妻たちが黒服も着かねるような状態におかれたのであった。日本のつつましい女性は、ほとんど全部が海の彼方の生活は知らず、地名もなじみない彼方に遠く、手紙さえ書けず、はかなく愛するものを死なした。

すこし深めて、第二次世界戦争のいきさつを眺めてみると、私たちを非常におどろかせる事実がある。