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せかいの「りょうりおうゆく」ということから
世界の「料理王逝く」ということから
北大路 魯山人
「星岡」1935(昭和10)年
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,861 字 · 6 页
「世界の食通から『料理の王』と賛美されたフランス随一の板前オウグュスト・エスコフィエ老がこのほど亡くなった。
翁は外国にあって――わけても英・独・米等の地に永く留まって、フランス料理の醍醐味を遍からしめたので、『美食の大使』とも呼ばれていた。
ロンドンのサボイ・ホテルやカルトンで腕を揮っていた頃には、どれほどの喰いしん坊がはるばる海を渡って彼の皿を求めに来たか知れない。
大戦前、しばらくの間独帝に仕えた折りのこと、朕を毒殺するも容易であろうといったカイゼルに対して、フランス人は不意討ちなどは仕りませぬと敢然といい放ったものだという。
その死に遇って、パリのあらゆる新聞が筆を揃えて、偉大なる損失を悼んだのも、また、先に政府が勲章をもって功績に報いたのも、調理を芸術の一分野と看る、いかにも美食国らしい振舞いではないか」
右は「料理王逝く」として去る四月二十八日の東朝所載の記事。いかにもその料理王なるひとの生涯は思い見てうらやましきことだ。
すべての日本は外国に優る
その料理王の料理、いうがごとくしてそれが日本人であるなら、僕らのごときは毎日のように彼の料理を食ったことか分らない。