轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
せそう
世相
織田 作之助
「人間」1946(昭和21)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 页
六
ズボンの膝は血で汚れていた。横堀は背中をまるめたままガツガツと食べはじめた。醜くはれ上った顔は何か狂暴めいていた。
私はそんな横堀の様子にふっと胸が温まったが、じっと見つめているうちに、ふと気がつけば私の眼はもうギラギラ残酷めいていた。横堀の浮浪生活を一篇の小説にまとめ上げようとする作家意識が頭をもたげていたのだ。哀れな旧友をモデルにしようとしている残酷さは、ふといやらしかったが。しかしやがて横堀がポツリポツリ語りだした話を聴いているうちに、私の頭の中には次第に一つの小説が作りあげられて行った。
六
中支からの復員の順位は抽籤できまったが、籤運がよくて一番船で帰ることになった。
十二月二十五日の夜、やっと大阪駅まで辿りついたが、さてこれからどこへ行けば良いのか、その当てもない。昔働いていた理髪店は恐らく焼けてしまっているだろうし、よしんば焼け残っていても、昔の不義理を思えば頼って行ける顔ではない。宿屋に泊るといっても、大阪のどこへ行けば宿屋があるのか、おまけに汽車の中で聴いた話では、大阪中さがしても一現で泊めてくれるような宿屋は一軒もないだろうということだ。