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せそう

世相

織田 作之助

「人間」1946(昭和21)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 页

青空文庫

莫迦だなア。電車賃のある内にどうしてやって来なかったんだ」

「へえ。済んまへん」

「途中大和川の鉄橋があっただろう」

「おました。しかし、踏み外して落ちたら落ちた時のこっちゃ。いっそのことその方が楽や、一思いに死ねたら極楽や思いましてん」

そんな風に心細いことを言っていたが、翌朝冬の物に添えて二百円やると、

「これだけの元手があったら、今日び金儲けの道はなんぼでもおます。正月までに五倍にしてみせます」横堀はにわかに生き生きした表情になった。

「ふーん。しかし五倍と聴くと、何だかまた博奕にひっ掛りそうだな。あれはよした方がいいよ。人に聴いたんだが、あれは本当は博奕じゃないんだよ。博奕なら勝ったり負けたりする筈だが、あれは絶対に負ける仕組みだからね。必ず負けると判れば、もう博奕じゃなくて興行か何かだろう。だから検挙して検事局へ廻しても、検事局じゃ賭博罪で起訴出来ないかも知れない、警察が街頭博奕を放任してるのもそのためだと、嘘か本当か知らんが穿ったことを言っていたよ。まアそんなものだから、よした方がいいと思うな」

「いや、今度は大丈夫儲けてみせます」

と、横堀は眼帯をかけながら、あれからいろいろ考えたが、たしかにあの博奕にはサクラがいて、サクラが張った所へ針の先が停ると睨んだ、だから今度はまず誰がサクラと物色して、こいつ