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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』
中里介山の『大菩薩峠』
三田村 鳶魚
「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页
一二一頁になると、「新徴組は野武士の集団である。野にあつて腕のムヅ痒さに堪へぬ者共を幕府が召し集めて、最も好むところの腕立てに任せる役目」云々とある。これでは相当腕前のある、立派な人間ばかり集めたようにみえるが、事実の方からいえば、大変な間違いで、あの中には、随分いい加減ぶしな人物が入っていて、小倉庵事件では青木弥太郎の下回りを働いて、泥坊をやったやつさえある。それに浪士ばかりじゃない、随分剣道の心得のないやつもいたので、腕前が揃っていたなんぞは、とんでもない話だ。大分向う見ずの奴等が多く集った、というならいいかもしれない。一二六頁に「彼等は皆一流一派に傑出した者共で」などとあるのは、全く恐れ入ったことと言わなければなりますまい。
土方が大将になって清川を要撃する。ところが駕籠が間違っていて、中にいたのは、当時有数の剣客島田虎之助だから堪らない、皆斬りまくられてしまう。それはいいが、駕籠の中をめがけて刀を突っ込んでも、何の手応もない。これは島田が「乗物の背後にヒタと背をつけて前を貫く刀に備へ、待てと土方の声がかゝつた時分には、既に刀の下げ緒は襷に綾どられ、愛刀志津三郎の目釘は湿されて居た。