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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』

中里介山の『大菩薩峠』

三田村 鳶魚

「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页

青空文庫

空を突かした刀の下から、同時にサツと居合の一太刀で、外に振りかぶつて待ち構へて居た彼の黒の一人の足を切つて飛んで出でたもの」で、外の者は全くそれに気がつかなかったようになっている。いくら名人の剣術遣いでも、そんなおかしなことが出来得べきものではない。

一二八頁には「島田虎之助は剣禅一致の妙諦に参し得た人です」と書いている。こんなことは全く書かいでもと思う話なので、参禅してどうなったかというと、「五年の間一日も欠かす事なく、気息を調へ丹田を練り、遂に大事を畢了しました」と書いてある。これでは参禅というのは、気息を調えて丹田を練る、そうして大事を畢了する、というふうに読める。座禅というものが、まるで岡田式みたいなものになってしまう。こんなことは書かずにおく方がいい。もし参禅というものを、そうしたものだと思う人があったら、それこそ大変な間違いを惹き起すことになる。

一方ではどういう心持か知らないが、「上求菩提、下化衆生」という心持で小説を拵えているとか称する作者が、こんなことを書いたのを改めようともしないでいるのは、そもそも何の心持があるのか、少年高科に登るということは不仕合せであると、李義山の『雑纂』