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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』

中里介山の『大菩薩峠』

三田村 鳶魚

「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页

青空文庫

と書いてある。そうして竜之助は、江川の足軽に剣術を教えている、というのです。代官の江川の屋敷が、芝の新銭座にあったかどうか、私は知りませんが、代官の屋敷に足軽がいましたろうか。そうしてまたその足軽に稽古させるために、剣客を抱えておくというほどのことがあったろうか。無論聞いたこともないが、何だか非常にそらぞらしく聞える。

それからまだこの間に、言葉としてわけのわからないのがあるけれども、それは飛ばして九四頁になります。島田虎之助という人の撃剣の道場へ、竜之助が行ったところの話で、「若し島田虎之助といふ人が彼方此方の試合の場を踏む人であつたなら、机竜之助の剣術ぶりも見たり或は其の評判も聞いたりして、疾くにさる者ありと感づいたであらうが、さういふ人でなかつたからこの場合、たゞ奇妙な剣術ぶりぢやとながめてゐるばかりです」――こう書いてある。島田虎之助は当時有数の剣客であったが、方々出歩くことをしないので、竜之助の剣術を見たこともなし、評判を聞いたこともなかった、というのですが、竜之助の剣術が非常にすぐれたものであったならば、ただ奇妙な剣術ぶりだといって眺めているはずはない。