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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页
その財宝はあくまで祖父三右衛門の遺志に従って、老いたるもの病めるもの、弱きものの救済施設を作るために費われ、余力があれば人類文化のために、世界平和のために、ノーベル賞の設定のようなことに向けられなければならない。それは私の祖父三右衛門が、いろいろの暴力と闘い抜きながら、命を賭けて果そうとした一生の念願だった――」
狩屋三郎はそう言って静かに皆んなの顔を見渡したのです。悪者共の暴行のために一朝にして廃墟のように荒された、狩屋三郎の豪華な応接間でそれは何んという力強い宣言でしょう。
「おもしろいぞ三ブちゃん、ぼくの身の廻りにそんな鍵なんかあろうとは思われないが、ともかくも、巨億の富を賭けた九つの鍵を探し、それを正しい費途に向けるのは、すばらしい冒険じゃないか。相手はなんであろうとぼくは敢然として挑戦に応ずるよ」
照国の誠一は、愛嬌のいい顔を出しこわばらせ、小さい身体をまりのようにはずませながら、テーブルの上をドンと叩いた時でした。
「あッ」
ガチャンと窓ガラスを叩き割った野球ボールほどの石が、誠一の拳固のそばに恐ろしい勢いで落ちて、二つ三つバウンドして、床の上に転がりました。