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くたにやき
九谷焼
中谷 宇吉郎
「理学部会誌」1924(大正13)年11月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,535 字 · 13 页
それから色々の所の土を用いて、絵だけは昔の様を継いで来ていたのであるが、この頃では、尾張などから生地を取りよせて、絵だけをつけることにしている人も多いらしい。
父が生きていたら、憤慨することだろう。
私が小学校へは入った頃から、四里ばかり離れた隣郡に寺井という町があって、そこに陶器の会社が出来た。そこでは、九谷を日用品として造り始めた。大量生産で「機械を据え」つけて、製品としてどんどん売り出したのである。これが案外販路がひらけて、四、五年の後には、この方が九谷焼としてより多く認められるようになって来た。しかしこれを老人たちは寺井焼といって、九谷焼とは称せなかった。この特徴は、手にさわると、ぼつぼつするように絵の具を盛りあげて、こってりと花などを一面に書き埋めてあるもので、よく湯呑の内部などに細い字が一杯書いてある。私たちが見ても俗悪だと感ずる位だから、老人たちの気に入るはずはない。生地からいっても絵からいっても、今までのどの九谷の窯とも似もつかず縁故も見出せぬものであるから、無理もないのである。勿論この会社は益々発展して、今東京や金沢の陶器店でさえ、殆んど全部がこの種に属するもので、今では立派な九谷焼の代表者となっているようである。