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らんぽぶんせき
乱歩分析
大下 宇陀児
「別冊宝石」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,427 字 · 17 页
その対照は、怪奇美とは限らない。
たとえば彼の長唄だ。
彼は三味線の調子の合せ方もできなかった時から習いはじめて三年目、もう「勧進帳」をやるまでになっている。年が年だから、習ってもすぐに忘れるようだが、譜面を前にし、わきからお師匠さんに応援してもらうと、どうにかやれるのであろう。短時日にそこまで行き得たのは、舌を捲くほどの進歩であり、それも彼の学究的素質のせいであると私は解釈している。芸事では、本来は彼はぶきっちょだ。得意とする彼の「槍さび」を、私は詩吟だといって悪評したことがある、しかし、長唄をはじめて三年目、今はたしかに「槍さび」になった。また長唄で最初に習った「岸の柳」は、お師匠さんの介添なしの一人歩きでやれ、お世辞ぬきにいって、一年間に三べんまでは、感心して聴いてやれる芸になっている。
かようにして江戸川乱歩は、学者肌にプラス芸術家肌である。
この二つの素質の複合からして、彼の探偵小説本格論も生まれてくるし、同時に、よい小説を書かれたし、一方では、一つの悩みも生れてきたのだ、と私は見る。
長いこと、彼は、快心の作を発表しない。
この還暦の祝いに「ぼくも力作を書く。