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らんぽぶんせき
乱歩分析
大下 宇陀児
「別冊宝石」1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,427 字 · 17 页
」といったのだから、それに大きい期待はするけれども、前述しておいたように、彼は並外れて丹念に注意深く設計をしておかないと、創作にとりかかれないたちであるから、執筆前の労苦が、たいへんなものであるにちがいない。
十数年の昔になるだろう。当時新青年の編集をやっていた水谷準が、少し腹を立てた顔で、私に愚痴をいったことがあった。
「乱歩は、驚天動地の傑作ばかり書こうとするからいけないんだよ。もっと気軽に、乱作でいいから、どしどし書いてくれたら、こっちは助かるのだが。」
どうやらこれは、例の「悪霊」が中絶した頃のことではなかったろうかと思われる。
私も水谷準の意見に同意したが、今にして思うと乱歩は必らずしも、それほどに野心的であったのではないかも知れない。その野心というのは、築き上げた名声を、より以上高からしめようという野心だが、それは有っても決して悪いことでなく、むしろ、自然に有るべきはずのものではあるが、実のところは彼は、いつもの丹念な設計に疲れ果てたのであろう。中絶は、不義理であり不面目であり、しかし、欲も得もなかった。そして、長いうち、それと同じ状態を持続したのである。