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らんぽしのしょさく
乱歩氏の諸作
平林 初之輔
「東京朝日新聞」1929(昭和4)年1月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,121 字 · 3 页
もっと常態な、健康なものの中に神秘を見出だすという方面へ氏の努力が転向されたなら、氏の想像力はもっと効果のある作品を生みだすに相違ない。多くの場合氏は、自分で想像したもののあまりの異様さに自分自身が圧倒されている。そして軽快を、朗らかな要素を欠いているために、一部の読者には偏愛されるかわり、はじめから大衆性を失っているのである。
「孤島の鬼」は、まだほんのプロローグに過ぎないので、やがて展開すべき事件の内容によってこの作品のストーリーとしての価値は決定されるのであるから、その点に対しては批評を避けるが、この作においては、特に、やがて発展すべき事件の怪奇さを、作者が何回もくりかえして予告的説明をしているのが眼ざわりである。これだけの説明をしいしい事件を展開していったのでは読者は大抵のことでは驚かぬようになっている。手法の上において注意すべき点だと思う。
探偵小説における江戸川乱歩氏と大衆小説における大仏次郎氏とはある一点において共通したところがある。両氏ともにその作品に「芸術的」要素をとりいれようとしている点がそれである。もちろんそれはよい心がけであって、ただのバス・タイム・ストーリーで満足している人々にとってはこの両氏の出現は脅威でなければならぬ。