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らんぽしのしょさく

乱歩氏の諸作

平林 初之輔

「東京朝日新聞」1929(昭和4)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,121 字 · 3 页

青空文庫

江戸川乱歩氏の作を『新青年』所載「悪夢」と「孤島の鬼」と二つ読んだ。

「悪夢」は氏の旧作「白昼夢」などとともにグロテスクをねらった作品である。四肢も耳も口もつぶれて、肉塊のような存在となっている廃中尉とその細君との変態的性生活を描いたものである。江戸川氏の想像力の怪異さはある意味で、世界の文学にも類例のない程のもので、この作品でも、そういう人間を性的享楽の対象に考えだしたいうことは私たちを驚嘆させる。

それにもかかわらず氏の筆には新鮮味が甚だ乏しく、常識的といってもよい程な生温い、説明的な文章である。だからこの作者の作品には詩がありそうでかえって詩がないのである。だからどんな途方もない想像をもってきても、読者を吃驚させるような強さがなくて、これでもか、これでもかとおさえつけている間に、下手をすると作者の方がくたびれてしまうのである。だから表現が冗長になって、作者の想像力の効果を、その常識的な、説明的な文章の力で相殺してしまうのである。

次に、これは是非もないことかもしれぬが、作者の想像力が、常に変態的な、異常なものにのみ向けられることに対して私たちは不満を感ずるのである。