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ちちをさす
乳を刺す
邦枝 完二
黒門町伝七捕物帳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,474 字 · 35 页
「はい、それはこうでございます。わたしは、両親が貧乏ですので、このお見世へまいります時に、まとまったお金を借りて居ます。途中でしくじりがございますと、そのお金をお返しして、国へ帰らなければなりません。きっと常どんは、それを考えて、何もかも黙っていてくれたんだと思います」
「成程」
「それに常どんは、お由利様思いでございますから、お嬢様のお部屋に、男がいたなどとは、どうしてもいえなかったんではございますまいか」
伝七が大きく頷いた時だった。
「親分、連れて来やした」
突然竹道の声が聞こえたとおもうと、右手を掴まれて、裏木戸から幽霊のように這入って来たのは、平太郎であった。
散っていた花
「お、平太郎か。ここへ掛けねえ」
「………」
おみねを立ち去らした跡を指さすと、平太郎は、阿波人形のように胴を真っ直ぐにしたまま、首だけ垂れて腰を下ろした。
「おめえが、お由利さんの部屋へ這入ったのア、何刻だった?」
「………」
「今朝、ここのお内儀が、お由利さんの死んでるのを見て騒ぎ出した時、駈けつけた旦那の気がついたのア、縁側の雨戸が二寸ばかり、開いてたってことだ。馴れた奴ア、決してそんな間抜けな真似はしやアしねえ。