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よがしゅっぱんじぎょう

予が出版事業

柳田 国男

「図書 第47号」岩波書店、1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,913 字 · 10 页

青空文庫

幸いにこの比較研究法は、是が端緒となって段々と発達して居る。それから今一つは前々年の経験、味をしめたと謂っては下品にも聴えるが、人には斯ういう報告にも耳を傾ける能力があるということは、あの時代としては一つの発見であった。現にそれから後、急に美人や風景や名物の土産品以外に、若い人たちの知りたがる地方事実が増加したのである。此本の出版はたしかに企業であった。信用はあったけれども私に資本は無かった。損をしたら填めようという内々の心構えをして、恐る恐る五十銭という定価を付けて見た。知友に頒つのは二百部でも十分なのを思い切って三百五十刷らせて見た。印刷所の支配人が書店を兼ねて居て、よく面倒を見てくれた。半歳ほどしてから番号順の購読者名簿と、三十何円かの現金を届けてくれる。是は何かと問うと遠野物語の純益だと答える。是は大成功と得意になって見たものの、御蔭で将来いつまでも素人本屋を続けなければならぬ運命を括り付けられたわけである。

此序に一言したいのは石神問答のことである。是も同じ親切な出版所の作業に成ったものだが、此方は全く向うの出版であった。ただ経験の少ない新店であっただけに、著者の注文はすべて受け入れられ、本の恰好から絵の入れ方、表紙は映丘に扉の文字は岡山君という書家に書かせるなど、一切が設計の通りで丸でこちら