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よがしゅっぱんじぎょう
予が出版事業
柳田 国男
「図書 第47号」岩波書店、1939(昭和14)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,913 字 · 10 页
何がこの大きな変革の原因かと考えると、先ず書籍の広告費というものが、此頃から急に激増して居る。次には所謂印税の制度、発行の部数に応じて著者の収入が累加するという組織が一般化して来た。この二つは関聯して居るかと思うが、とにかくに多く売れる本が次第に著述を職業たらしめた。以前印刷費に菜大根と同じほどの口銭を掛けて、沢山並べて居た小冊子というものが、徐々として影を鎮めてしまった。五銭や八銭の新刊は、今のように何万と出る見込は無いのだから、とても宣伝費を背負う力が無く、従ってどんな降らぬものでも体裁をつけ分量を大きくする。本が此頃から著しく高くなり、同時に無名氏の論策や研究によって世に認められようという機会は遮断せられた。今日は専門の雑誌があってやや長い論文でも出してくれるが、そんなのはまだ殆ど一つも無かった。昔の和本でいうなら三巻か五巻、今の四百字原稿で百枚から百五十枚ほどの、ちょうど頃合の新著というものが、よほどえらい人の書いたのでも、日の目を見ることが出来なくなって居た。単純なる自分は愚書の世に溢れて居る原因を、専らここに在る如くに解して居たのである。