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よしんちょうしょ

予審調書

平林 初之輔

「新青年」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,371 字 · 23 页

青空文庫

ですからその後のことは何も知らないのです。私の申し上げたことをお疑いになるのなら、わたしの家の裏庭の無花果の根元を掘ってごらんなさい。血をふいた雑巾が埋めてあるはずです。それから、金物屋を呼んで来て下さい。浅羽屋という家です。きっとあの小刀をあの晩わたしに売ったことをまだおぼえているでしょう。もうこの他に申し上げることはありません。どうぞすぐにせがれを放免してわたしを縛って下さい!」

「もう金物屋を呼ぶ必要はありません。その金物屋は、たしかにあなたにあの晩あの小刀を売ったと言っておるのです。今にここへ来るはずです。さっき玄関でベルが鳴ったでしょう。あの時刑事が金物屋の報告を伝えて来たのです。その時、ことによると、あなたが自白されない場合にはやむを得んから顔をつきあわせるつもりで、呼びにやったのです。」

何もかも観念した人間には、苦しみもなければ悩みもない。原田教授は落ちついて言った。

「こうわかった以上は、さっそくせがれは放免して下さるでしょうな?」

「御子息はもうすでに予審免訴ということに決まっておるのです。林が免訴になったと言ったのは、実はうそで、免訴になったのは御子息のことなのです。