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よしんちょうしょ
予審調書
平林 初之輔
「新青年」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,371 字 · 23 页
」
教授の顔には心からの安心の色が浮んだ。判事は更におだやかに言葉をつづけた。
「ついでにすっかり白状して下さらんですか? 何もかも。」
教授はぎくりとした。
「白状ですって、この上に? ではこれだけ申し上げても、まだせがれに対する疑いがはれんのですか? はやくわたしを縛って下さい。」
判事はしばらく腕をくんで考えていたが、やがてまた口を開いた。
「どうしてもこれ以上打ち開けて下さらんなら仕方がありません。では、今おっしゃったことを、玄関の死体を台所へ運んでいって小刀をつき刺されたまでのところを、御面倒ですが、もう一度繰り返しておっしゃって下さい。ちょっと書きとらせますから。」
教授は判事の質問のままに前の口述を繰り返した。秘書がそれを筆記した。筆記がすむとまた秘書は出ていった。
「いやどうも御面倒でした。これで、やっとこの事件の予審調書がすっかりできあがりました。」
「せがれの嫌疑はすっかりはれたでしょうな?」教授の気にかかるのはこの一点だけとなった。
「この事件では、最初から御子息の有罪を疑っている人間が二人あったので、意外にしらべが長びいたわけです」と判事はくだけた調子で語り出した。