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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页
性格の異うこと、何と云っても、彼女は芸術家には生れ付いて居ないこと。それ等が実感として彼女の反省にのぼりさえしたら、或程度まで譲歩は出来得よう。自分には、すべき実に多くの感謝がある。美しい調和、いやしい妥協ではなく、真心からとけた協和が生れない訳はないのである。
父と自分との間には、可なり迄、此点はよく行って居る。自分は、父の家庭的位置と云うことにも深い理解と同情とを感じて居る。
それ等のことは、又いつかくわしく書く機会もあろうが、ちっとも苦しめたくない、懐しい父が、彼の顔に憂いを漲らせ、悵然とされると、実にたまらない。どうでもよい。早くやめたい、とさえ思ってしまう。
今も、森とした夜の畳の上に、彼が、一日中疲れた丸い脚をすとんと延し、斜に手をついて
「困ったことじゃあないか、え?――まあ、今夜はおそくもなったから、帰るといい。よく考えなくちゃならんことだ。」
と云われると、自分は言葉に従うほかない。
母は、Aが、「それでも」と彼女の言葉を押して、理解され愛されることを懇願せず、
「それならば仕方がありません。私は、謹んで引下って居ります。私もよく考えますから、どうぞ、おかあさまも、よくお考えになって下さい」