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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页
それは自分は、偉大な芸術家ではないし、神のような人格者でもないから、人の心を傷けることはあるだろう。相すまなくは思う。が、どうぞ、私が窮極に於て何を目指して居るのか、何の為に毎日、此命を保って居るのか、それ丈は、判って貰いたい。母と自分との関係など、難しい、辛いものは少なかろう。
彼女は、彼女自身の悦び希望を以て、私を、小さい時から、芸術的傾向に進ませた。そして、いよいよ少しはものになりかけ、自覚、良心が芽生えて来ると、私と彼女との芸術観の深さ、直接性に著しい差が生じ、自分が進ませた道であるが故に、彼女は一層失望や焦慮を感じ、私は、絶えず、自己の内的生活、制作に、有形無形の掣肘を加えられると云う意識から脱し切れない有様なのである。
自分は、其動機の裡に、仮令、或程度の世間的野心や慾望の遂行が含まれて居ようとも、兎に角、母が、自分の傾向を理解し、一生を生かせる道を与えて呉れられたことには、深い感謝を覚えて居る。思想上種々なコンフリクトがあったとしても、自分のその有難さ丈は一点の汚辱も受けないのである。
母が、それをすっかり理解し、自分も其点で、希望と信頼とを持って呉れたら、どんなによいだろう。