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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
アメリカの大学附属の寄宿舎暮しをしていた間、伸子は中国女学生の集団的な行動と、中国の実情を外国に知らそうとする熱心さにうたれた。同じ寄宿舎に生活していた数人の中国女学生が、余興つきの「中国の夕べ」を催したりするとき、彼女たちの活動ぶりは、中国女性のつよさと、政治的な力量のようなものを伸子に印象づけた。そういう中国の若い女性たちが、観察のために眼と心とを鋭くひらいて東京へ来て、どんな発見をしているだろう。伸子が女学校を卒業してから、一学期だけ通った女子大学の英文科の予科のクラスにも、崔さんとかいう名だった中国の女学生がいた。その崔さんは、むくんだような顔色の上に古風なひさし髪を結い、めいせんの日本服にエビ茶の袴をはいていた。纏足した小さな足で不自由そうに歩いた。教室の一番うしろの席にいて、伸子は崔さんを見るたびに、彼女をなにかなぐさめてやりたい気持になった。伸子がそんな気分にうごかされるように、崔さんの沈んだ顔色や言葉も足も不自由な姿には漠然とした満たされない感じがただよっていた。日本の生活が中国の留学生にとって愉快なものでないことは、そのころの伸子にもわかっていた。