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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

絶望はいっそう深まり、伸子は新しく声をあげて泣いた。

古びて木目のたった縁側で泣いていた自分のその声のなかから、伸子はいま、たくさんの女の泣く声がきこえて来るように感じた。

十四

電話口に出た女の声は遠くたよりなくて、伸子が、

「もしもし、佐々ですか?」

と力を入れてきくと、

「はア」

と答えた。

「わたし、よ。伸子ですが、いらっしゃる?」

とききかえすと、また、

「はア」

と返辞した。

「ね、お母様いらっしゃるの? いらっしゃるなら、ちょっと電話口まで……」

「はア」

というから、伸子はきき耳を立てて待った。佐々の家では、多計代たちだけ卓上電話を使っていて、そちらに連接をきりかえるとプツッとスイッチのはいる音がする。伸子はきき耳を立ててその音がするのを待った。が、受話器の中では変化なく電流が響き、どこかの通話の声がしているばかりである。念のため、

「もし、もし」

といってみたらば、同じ声が、

「はア」

といったので、伸子はびっくりした。

「もしもし、あなた、だれ?」

「…………」

「ききにくいなら、誰かほかの人に出ておもらいなさいよ」

引っこんだらしく、ややしばらくして、こんどは、