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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
だが、それは伸子に、これらの人々が、ただ自分たちをアナーキストと名づけているにすぎないような心持をおこさせるのであった。
伸子は、三人に向って丁寧にいった。
「どうか、お仲間の方たちによくいっておいて下さい、佐々伸子のところへ行っても金にはならないって。――」
一寸ひっこんで伸子は、いくらかの小銭をもってまた出て来た。
「失礼ですが電車賃をさしあげます。きっちりよ」
郊外電車往復三人分、市電往復三人分。それだけの金をわたした。ステッキの青年は、黙ってそれをうけとった。そして、
「おい、帰ろう」
仲間を促して二人をさきに玄関から出し、最後に自分が出て、入口の格子をうしろ手にしめた。
その青年が、仲間をさきに出したことや、荒っぽくなく、尋常に格子をしめて行ったことなどが、伸子の心につよい印象をのこした。自分と大して年もちがわない三人の彼ら。彼らの雰囲気はあらがねのように、いいもわるいもごたごただ。はっきりわからないところだらけなのは彼らばかりのことだろうか。わからないといえば伸子もよくわからなかった。三人の青年のいわゆるアナーキストぶりはどうも納得出来ない。