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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「本当によく来て下さいました。屑のようなものだけれど、こうして日本でみるとなつかしいもんですな。――ハルビンにいたときの記念品みたいなわけで……」
さっきの若い女のひとが、お茶を運んで来た。細君の妹ということだった。やがて、
「どうも、失礼いたしました。つい、手まわしが下手だもんで……」
そういいながら、あっさりと木綿の白地の単衣を着た細君が買物から戻って来た。その細君をみて、伸子は、妹という若い女との対照をつよく感じた。細君は小柄なひとであった。しまった浅黒いからだで、小じんまりした顔の造作のなかに、二つの眼がからだの小ささに似あわしくないつよい光をもっていた。愛嬌がよくて、声を立てて笑うのに、その二つのつよく光ってる眼の中は笑わなかった。伸子は、その笑わない眼が無視できなかった。自分だけは、姉とちがって薄紫の銘仙の単衣を着て、人絹であるけれど華やかなアマリリスの花のついた帯をしめ、大柄なからだのぼってりとしたしなやかな重さを一つ一つの動作につれて自分でもたのしんでいるような妹というひとのどこかゆるんだとりなしは、つつましくまめな主婦の気分で統一され、それを意識している姉とひどくちがった。