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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

「その相談をした人が問題なのさ」

小川豊助は、鋭い素子の勢におされて、しばらく沈黙していたが、

「やっぱりいろいろのいきさつもあるんでしょうし……」

苦労になれ、また同時にそういう派手やかな場合、問題の圏外におかれつけて来ている人のおとなしさで小川豊助は答えた。

「交渉した人をとりのけてきめることも出来なかったんでしょう」

「しかしそれゃ情実ですよ。いやしくも国賓となれば、日本の文化人の代表だもの……変だなあ」

素子は、非常に根づよく追究した。

「どうして、登坂先生をのけものにしたんだろう。ロシア文学関係では、芝居の佐内さんと同じに功績のある人なのに――独創的ではないけれど……不公平ですよ」

素子が、伊豆へ一緒に行って一夏暮したのはその登坂教授であった。

「そんな不公平を、どうして後輩がだまっているんだろう。薄情だ」

伸子は、かたわらからきいていて、どこにでもおこることがまたここでくりかえされていると思った。外国人同士の間で、まっさきに自分を紹介し、自分を推薦し、代表らしく扱わせる人々というものが、いつも必ずしも本国の人全体からそれだけの価値をもって見られているというのではない場合が多い。