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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
佃の家を出て、二階借りの生活から、駒沢のこの家へ来た二年目の冬まで、伸子はその小説を書きつづけた。それは、少女の心をぬけきらなかった伸子がニューヨークで生活しはじめ、佃と結婚しそれが破壊されたいきさつを追った作品であった。五年の間苦しみながら自分として生き甲斐のある生存を求めて来た道を、そうやってたどり直して見るしか伸子には新しい一歩の踏み出しようがなかった。動坂のうちにとって、伸子が、はっきり外にいる娘の立場に立つようになったのも、その小説とつながりがあった。多計代は娘の書く小説を一行一行よんだ。そして女主人公の母親として登場する人物を、現実の自分とてらし合わせ、感情を害するたびに、伸子を動坂へよびよせた。呼ばれるごとに、伸子はせつない表情をして多計代の腹立ちをきいた。お前は冷酷だ。そういわれた。エゴイストは、自分だけ満足ならそれでいいのだろう。そう罵られた。越智との交渉が深まってから、多計代の心持は、伸子にたいする越智の批評を柱として、なお複雑となり固定した。調和的な天性の佐々は母娘の争いにくたびれて、
「伸子、もっと空想の、美しい小説を書きなさい、え? お前は書ける人だ、あの素晴らしい色彩で、さ」