轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

あまり永くしんとしていたのに心づいて、急に不安になったように、

「ぶこちゃん」

となりの部屋から素子が声をかけた。

「いる?」

「――いる」

「斎藤へ筍ほりによこせっていってやらないと、またあとで細君がうるさいね」

その家は斎藤という軍人のもち家なのであった。

「……そうね」

「あしたでも、とよに持たせてやろうか」

「それがいいかもしれない」

素子にその感情をかくすというのではなく、伸子はおだやかに、言葉すくなく襖越しの応答をした。地平線のかなたにひとかたまりの雲が湧き出した。青く晴れた空のひろさにくらべて、その雲のかたまりはごく小さくて、それを吹き動かす風も立っていないとき、その雲のかげについて、伸子はなんと話すことが出来るだろう。柘榴の幹をすべって、細かいその葉を梳きながら、郊外のごみのない日光が芝生にひろく射している。陽の明るさに向って瞳をほそめながら、伸子は頬杖をついたなり、じっと心の地平線に見えはじめている小さい雲のかたまりを見つめた。

六

土曜日の午後のことであった。

伸子たちのすんでいる駒沢の奥の家の、裏に向った四畳半で、ロシア語の稽古がはじまっていた。