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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
素子は、
「なんだ! あんな温室ぐらい」
そういってわきを向いた。素子は、伸子が大袈裟にさわぎ立てているという風に不快を示している。それは素子の感情的なうけとりかたに思えた。
「わたしがどうというのじゃないのよ。保の部屋の鴨居の貼紙のこと、話したでしょう?」
伸子は、真面目にいった。
「わたしは、保が心配なのよ。あのひとには、何かしてやることがあるにちがいないのよ。だから、花も見せたいの」
「――ともかく、私はごめんだ……」
日曜日の約束してあった時間、ほとんどきっかりに、東京高校の黒い制服をきた保が訪ねて来た。多計代のおみやげの、虎屋の羊羮を出した。
「保さん、ここはじめてでしょう」
「ああ」
保は、目新しそうに庭や竹藪を見まわした。
「きょうは夜までゆっくりしてゆくんでしょう?」
「僕、夕飯までに帰る。――お母様にそういって来たから。……間に合うでしょう?」
「それゃ、間には合うけれど……ともかく行きましょう」
伸子が帯をしめ直しに玄関わきの六畳へ入ったあとから、素子がついて来た。懐手をして、
「結局、行くんじゃないか」
おはしょりを直している伸子にいった。
「行きましょうよ、一緒に。