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ふたりいるとき

二人いるとき

宮本 百合子

「新女苑」1938(昭和13)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,672 字 · 18 页

青空文庫

多喜子が帰るしおを計っていると、幸治が案外の敏感さで、

「まあよろしいでしょう」

ととめた。そして、冗談と十分対手に分らせた物々しさで、

「どうだい、ひとつ多喜子さんに僕たちが何に見えるか鑑定していただこうじゃないか」

と云い出した。

「何に見えるって――何なの?」

桃子の顔を見ると、桃子は火鉢のふちへもたれかかって妙に口元を曲げたなり火箸で灰をいじっていて聞えないようにしている。

「実はきのうは、僕たちの記念日でしてね、ひとつ趣向をかえて御飯でもたべようということにしたんです、或る家でね。細君なのか、細君でないのか、という微妙なところをやって見せようというのに、役者が下手で駄目なんです。僕がわざと女中の来たときに、あっちのお帰りの時間はいいんですかとか何とか盛んにやるのに、この奴ったら、……」

尚子は、ふふふふと笑って、

「だって――」

と云ったが、いかにも屈托ない様子で、

「あの女中さん、一向けろりとしていたわね」

それが寧ろ不思議らしい調子である。

さっきから黙っていた桃子が頬っぺたに散りかかる髪を払いのけるように火鉢から頭をあげて、

「とにかくお兄様は心臓がつよいわよ」