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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
ひとりひとりの顔を見ながら、
「大きくなったじゃないの。今に先生においつくわ。あら、小ツやんなんか、追いこしそうだ」
小ツルに肩をならべ、
「へえ、まけた。でもしようがない、小石先生だもんね」
みんな笑った。
「あんたらが小石先生といったもんで、いつまでたっても大石先生になれないじゃないの」
また笑った。笑いはするが、だれもまだ、なんともいわない。
「いやに、おとなしいのね。五年生になったら、こんな、おとなしくなったの」
それでもにこにこしているだけなのは、小石先生が、なんだかまえと少しかわって見えたからだった。色も白くなっているし、そばにくると、スミレの花のようにいいにおいがした。それは嫁さんのにおいだというのを、みんなは知っていた。
「せんせ」
マスノがやっと口をきった。
「先生、唱歌おしえてくれるん?」
「そう。唱歌だけじゃないわ。あんたたちの受けもちよ、こんど」
わあっと歓声があがり、きゅうにうちとけてしゃべりだした。先生、先生とだれかが呼びつづける。呼びつづけながら岬の村のいろんなできごとが、その海の色や風の音までつたわってくるようにわかった。コトエのうちでは最近、おばあさんが卒中でなくなり、ソンキのお母さんはリョウマチで寝こんでいるという。