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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
たまに道で出あうと、なつかしがってとびついてき、
「せんせ、わたし、いつも先生のこと、あいたくてェ」
涙までためてよろこぶ子どもっぽいしぐさなのに、じみ作りな彼女は二十歳やそこらとは見えなかった。
高等科へもすすめず、嫁にもらわれることを将来の目的として女中奉公に出たコトエはどうなったであろうか。彼女は嫁にもらい手がつくまえに、病気になって帰ってきた。肺病であった。骨と皮にやせて、ただひとり物置きに寝ていると聞いてから、だいぶたつ。
高等科に進めなかったもうひとりの富士子については、いやな噂がたっていた。仁太が、富士子に会うた、というのは、遊び女としての富士子との出あいにちがいなかった。仁太の顔にあらわれたものでそうとさとって、わざとききかえさなかったが、噂はとうの昔に小ツルから聞いていた。富士子は親に売られたというのだ。家具や衣類と同じように、今日の一家のいのちをつなぐために、富士子は売りはらわれたのだ。はたらくということを知らずに育った彼女が、たとえいやしい商売女にしろ、売られてそこではじめて人生というものを知ったとしたら、それは富士子のためによろこばねばなるまい。