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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

生きてはいてももどれぬ兵隊、永久に戻ることのない父や夫や息子や兄弟たちの、かつての名誉の門標は家々の門から、いっせいに姿を消し、ふたたび行方不明になった。それで戦争の責任をのがれでもしたかのように。

同じようにそれのなくなった家で、思いがけなく大吉は、妹の八津のとつぜんの死をむかえねばならなかった。おばあさんがなくなってから一年目のことである。わずか一年そこそこのうちに、三人の死を迎えたわけだった。父のように大海の泡沫のなかに消えて姿を見せない死、おばあさんのように病みほうけて枯木のようになってたおれた生涯、昨日まで元気だったのが一夜のうちに夢のように消えてしまった、はかない八津の死。そのなかで八津の死はいちばんみんなを悲しませた。急性腸カタルだった。家のものにだまって、八津は青い柿の実をたべたのである。もうひと月もすればうれるのに、渋くはないということで八津はそれを食べたのである。いっしょに食べた子もあるのに、八津だけが命をうばわれた。

戦争はすんでいるけれど、八津はやっぱり戦争で殺されたのだ。――

母がそういったとき、大吉はきゅうには意味がのみこめなかったが、だんだんわかってきた。