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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「あの人こそ先生、かいもく行方不明ですわ。なんでも戦時中、成金さんにうけだされて出世したという噂もありましたけど、どうせ軍需会社でしょうから、今はどうなりましたか……」
知らずしらず顔色に出たミサ子の優越感にも、人生の裏道を歩いているらしい松江や富士子のことにも、わざと目をそらすかのように大石先生はうつむいて、じぶんにでもいって聞かせるように小声でつぶやいた。
「生きていれば、また会うこともあるけれど、死んでしまっちゃあね」
ミサ子もしんみりと声をおとし、
「ほんとですわ。死んで花実が咲くものか……。コトやんが死んだのは、ごぞんじですか?」
だまってうなずく先生に、ミサ子は立てつづけて、
「ソンキさんのことは?」
おなじようにうなずく先生の目に、またも涙はあふれていた。磯吉が失明して除隊になったと早苗から聞かされたとき、早苗といっしょに声をあげて泣いた先生であったが、あのときの悲しみは今も心の底に沈もっている。早苗が見舞いにゆくと、磯吉は眼帯をした顔を膝につくほどうつむきこんで、いっそ死んだほうがよかったとしょげきっていたという。質屋の番頭をこころざしていた彼が、貧しい実家にかえっての立場を思うと死にたかった磯吉の気持もさっしられて、泣いたのだが、今はもうちがってきている。