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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

今はもう、ただ静かにたたえているだけのような海の水が、昨夜はこの高い道路の石垣をのりこえて、こんな石まで打ちあげるほどあれくるったのかと思うと、そのふしぎな自然の力におどろきあきれるばかりだった。波は石をはこび、風は家をたおし、岬の村はまったく大騒動の一夜であったのだ。同じ二百十日も、岬の内と外ではこうもちがうのかと思いながら、先生は抱えた石をどしんと浜になげ、すぐそばで、なれたしぐさで石をけとばしている三年生の男の子にきいた。

「時化のとき、いつもこんなふうになるの?」

「はい」

「そして、みんなで石掃除するの?」

「はい」

ちょうど、そこを香川マスノの母親がとおりかかり、

「まあま先生、ごくろうでござんすな。でも、今日はざっとにしたほうがよろしいですわ。どうせまた、うしろ七日や二百二十日がひかえとりますからな」

本村のほうで料理屋と宿屋をしているマスノの母は、わが子のいる岬へようすを見にきたということであった。マスノがとんできて、母親の腰にかじりつき、

「お母さん、おそろしかったんで、ゆうべ。うち、ごつげな音がして、おばあさんにかじりついて寝たん。朝おきたら、はねつるべの棹が折れとったんで。