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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

かけつけた男先生にきかれて、女先生はだまってうなずいた。

「歩けそうにないですかい?」

また、うなずいた。

「一ぺん、立ってみたら?」

だまっている。西口ミサコの家からミサ子の母親が、うどんこと卵をねったはり薬を布にのばしてもってきた。

「骨は、折れとらんと思いますが、早く医者にかかるか、もみりょうじしたほうがよろしいで」

「もみ医者なら中町の草加がよかろう。骨つぎもするし」

「草加より、橋本外科のほうが、そりゃあよかろう」

口ぐちにいろんなことをいったが、なにをどうするにも岬の村では外科の医者も、もみりょうじもなかった。たった一つはっきりしていることは、どうしても先生は歩けないということだった。あれこれ相談のけっか、舟で中町までつれてゆくことになった。漁師の森岡正の家の舟で、加部小ツルのお父さんと竹一の兄がこいでゆくことに話がきまった。男先生はついてゆくことになり、女先生をおんぶして舟にのった。坐らせたり、おぶったり、ねかせたりするたびに、女先生のがまんした口から思わずうなり声が出た。

舟が渚をはなれだすと、わあっと、女の子の泣き声がかたまってとんできた。