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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

ほんとに、すき勝手に遊んでよいのはひとりっ子のマスノとミサ子だけだ。

コトエの一言はみんなにそれを思いださせたが、しかし、思いとどまることはできない空気だった。

「めし食べたら、そうっとぬけだしてこうや」

小ツルが、乗りかかった船だとでもいうように、みんなをけしかけた。

「そうじゃ、みんなうちの人にいうたら、行かしてくれんかもしれん。だまっていこうや」

竹一が知恵をめぐらしてそう決断した。こうなるともう、だれひとり反対するものはなく、秘密で出かけることがかえってみんなをうきうきさせた。

「そうっとぬけだしてな、波止の上ぐらいからいっしょになろう」

正がそういうと、総帥格のマスノはいっそうこまかく頭をつかい、

「波止の上は、よろずやのばあやんに見つかるとうるさいから、藪のとこぐらいにしようや」

「それがえい。みんな、畑の道とおってぬけていこう」

めいめい、きゅうにいそがしくなった。

「ほんまに、走っていって、走ってもどらんかな」

念をおしたのはコトエである。みんなが走って帰ってゆくあとから、コトエは考え考え歩いた。どう考えても、だまってぬけだす工夫はないように思えた。