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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
小林先生もその芋女出身だった。子どもたちは、こんどくる女先生をも芋女出ときめて、もうくるか、もう見えるかと、道がまがるたびに前方を見わたしたが、彼らの期待する芋女出え出えの若い先生の姿にはついに出あわず、本村の広い県道に出てしまった。と同時に、もうおなご先生のことなどかなぐり捨てて、小走りになった。いつも見るくせになっている県道ぞいの宿屋の玄関の大時計が、いつもより十分ほどすすんでいたからだ。時計がすすんだのではなく、小林先生と立ち話をしただけおそくなったのだ。背中や脇の下で筆箱を鳴らしながら、ほこりを立ててみんなは走りつづけた。
そうして、その日の帰り道、ふたたび女先生のことを思いだしたのは県道から、岬のほうへわかれた山道にさしかかってからである。しかもまた、向こうから小林先生が歩いてくるのだ。長い袂の着物をきた小林先生は、その袂をひらひらさせながら、みょうに両手を動かしている。
「せんせえ」
「おなごせんせえ」
女の子はみんな走りだした。先生の笑顔がだんだんはっきりと近づいてくると、先生の両手が見えない綱をひっぱっていることがわかって、みんな笑った。