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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

もちろんいるわけがない。それどころか早苗もまだ帰らないというのだ。かえりに荒神さまをのぞいてみたが、杉の木かげに遊んでいたのはコトエより少し大きい子や、小さい子ばかりだった。だれにともなく大声で、

「おまえら、うちのコト、知らんかいの?」

「しらんで」

「一ぺんも、今日は見んで」

「早苗さん家とちがうか」

いろんな返事が矢つぎ早にとんできた。それはみな腹の立つ返事ばかりだった。

「しょうのないやつじゃ、ほんまに。見つけたら、すぐもどれいよったと、いうておくれ」

おばんは、ひょいと投げるようにして赤ん坊を背中にやり、まだわかりもしない赤ん坊に話しかけた。

「姉やんは、どこへうせやがったんじゃろな。コトのやつめ、もどってきたら、どやしつけてやらんならん」

しかし、昼飯もまだなのを思うと、少し心配になった。心配しいしい土間でぞうりを作っていると、川本大工のおかみさんが、気ぜわしそうな足どりでやってきた。

「こんちは、えいお天気で。うちのマツを見にきたんじゃけんど、見えんなあ」

それを聞くと、コトエのおばんはぞうり作りの手をおいて、

「マッちゃんもかいな。昼飯も食べんと、どこをほっつき歩きよんのかしらん」