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にせんどうか
二銭銅貨
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1923(大正12)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,143 字 · 34 页
で、その泥坊が取調べを受けて白状した所によると、犯行の当日――勿論、その日は職工の給料日と知って訪問したのだが――支配人の留守の間に、隣の計算室に這入って例の金を取ると、折鞄の中にただそれ丈けを入れて居った所の、レーンコートとハンチングを取出して、その代りに、鞄の中へは、盗んだ紙幣の一部分を入れて、眼鏡をはずし、口髭をとり、レーンコートでモーニング姿を包み、中折の代りにハンチングを冠って、来た時とは別の出口から、何食わぬ顔をして逃げ出したのであった。あの小額の紙幣で五万円という金額を、どうして、誰にも疑われぬ様に、持出すことが出来たかという訊問に対して、紳士泥坊が、ニヤリと得意らしい笑いを浮べて答えたことには、
「私共は、からだ中が袋で出来上っています。その証拠には、押収されたモーニングを調べて御覧なさい。一寸見ると普通のモーニングだが、実は手品使いの服の様に、附けられる丈けの隠し袋が附いているんです。五万円位の金を隠すのは訳はありません。支那人の手品使いは、大きな、水の這入った丼鉢でさえからだの中へ隠すではありませんか」
さて、この泥坊事件がこれ丈けでおしまいなら、別段の興味もないのであるが、茲に一つ普通の泥坊と違った、妙な点があった。