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にせんどうか
二銭銅貨
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1923(大正12)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,143 字 · 34 页
そして、それが私のお話の本筋に、大いに関係がある訳なのである。
というのは、この紳士泥坊は、盗んだ五万円の隠し場所について、一言も白状しなかったのである。警察と、検事廷と、公判廷と、この三つの関所で、手を換え品を換えて責め問われても、彼はただ知らないの一点張りで通した。そして、おしまいには、その僅か一週間ばかりの間に、使い果して了ったのだという様な、出鱈目をさえ云い出したのである。
其筋としては、探偵の力によって、その金のありかを探し出す外はなかった。そして、随分探したらしいのであるが、一向見つからなかった。そこで、その紳士泥坊は、五万円隠匿の廉によって、窃盗犯としては可也重い懲役に処せられたのである。
困ったのは被害者の工場である。工場としては、犯人よりは五万円が発見して欲しかったのである。勿論、警察の方でもその金の捜索を止めた訳ではないが、どうも手ぬるい様な気がする。そこで、工場の当の責任者たる支配人は、その金を発見したものには、発見額の一割の賞を懸けるということを発表した。つまり五千円の懸賞である。
これからお話しようとする、松村武と私自身とに関する、一寸興味のある物語は、この泥坊事件がこういう風に発展している時に起ったことなのである。