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ごかいのまど

五階の窓

江戸川 乱歩

01 合作の一(発端)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,189 字 · 21 页

青空文庫

二人は少しばかり酔っていた。夕暮の風の寒さに、人通りの少い敷石道を、彼等はコツコツと靴音を響かせ、高声に話しながら歩いていた。時々砂を交えた空風が、二人の外套を飜して通り過ぎた。

「この辺を歩いていると、日本という感じがしないね。殊にこんな人通りの少い日は」

小説家の長谷川は、両側に立並んだ西洋館を眺めながら云った。

「君なんか、滅多にこの辺を歩かないからだよ」

新聞記者の山本が答えた。

「地下室なんてものがあるね。見給え、あすこで弁当を食っている爺さんの頭は、恰度僕等の足と同じ地平線にある。変な気がするね」

小説家は足下に開いた地下室の窓を覗きながら歩いていた。ある地下室では、白い帽子を冠ったコック達が、湯気の立籠った中で、せっせと働いていた。ある地下室では、バタンバタンと印刷機械が動いて、一人の子供が忙し相に紙をはさんでいた。それらの人間の頭が、皆足の下にあるのだ。

ふと建物が切れて、建物と建物との間の路次の様な所へ来ると、極った様に鉄の非常梯子の上り口が見えた。そして、その奥の方は薄暗く、何かゴミゴミしたものが積み上げてあった。

「地下室だとか非常梯子だとか、そんなものを見ると、益々異国という感じだね。